「このCOBOLシステム、もう誰も仕様を理解していない...」そんな悲鳴が、多くの企業から聞こえてきます。長年稼働してきた基幹システムは、企業の生命線である一方で、ブラックボックス化が進み、保守・改修のハードルが年々高くなっています。
そんな中、生成AIを活用したレガシーコード解析が注目されています。AIがCOBOLのソースコードを読み取り、仕様書やドキュメントを自動生成する技術です。本記事では、その効果と限界について、活用例をもとに解説します。
1. AI可視化とは何か?
AI可視化とは、生成AI(ChatGPT、Claude、GitHub Copilotなど)を活用して、既存のソースコードを解析し、以下のような成果物を自動生成する技術です。
- プログラム構造図: プログラム間の呼び出し関係を可視化
- データ定義書: ファイル構造、レコードレイアウト、項目定義を整理
- 処理フロー図: プログラムの処理の流れをフローチャートで表現
- 仕様書(日本語解説): 「このプログラムは何をしているのか」を自然言語で説明
従来の手作業との違い
従来、レガシーシステムのドキュメント作成は、エンジニアがコードを読み、手作業で仕様書を書き起こしていました。しかし、数百万行にも及ぶCOBOLコードを、人間が全て理解するのは現実的ではありません。
AIを活用することで、数百万行のコードを数週間で解析し、ドキュメントを生成できます。人間が数年かかる作業を、AIは数週間で完了させるのです。
2. AI可視化の3つの効果
効果① 属人化の解消
「特定の担当者しか分からない」という状況を解消します。AIが生成したドキュメントにより、誰でもシステムの概要を理解できるようになります。これにより、担当者の退職リスク、異動リスクが大幅に軽減されます。
効果② 保守・改修工数の削減
影響範囲の調査時間が劇的に短縮されます。「この項目を変更したら、どのプログラムに影響するか?」という調査が、従来は数日かかっていましたが、ドキュメントがあれば数時間で完了します。
ある企業での活用例では、年間300時間の工数削減を実現しました(詳細は活用例参照)。
効果③ 若手エンジニアの育成加速
若手エンジニアが、ベテランに頼らずともシステムを理解できるようになります。ドキュメントを見ながら、安全に改修作業ができるため、育成スピードが格段に向上します。
3. AI可視化の3つの限界
しかし、AI可視化は万能ではありません。以下の3つの限界を理解した上で、適切に活用する必要があります。
限界① 100%の精度は保証されない
AIは、コードから「推測」してドキュメントを生成します。そのため、複雑なビジネスロジックや、暗黙の仕様を完全に理解することは困難です。生成されたドキュメントは、必ず人間がレビューし、検証する必要があります。
限界② ビジネス背景までは読み取れない
「なぜこの処理が必要なのか」「この計算式はどういう業務ルールに基づいているのか」といった、ビジネス背景はコードには書かれていません。AIは、コードに書かれている内容しか理解できないため、業務知識を持つ人間のインプットが不可欠です。
限界③ 保守されなければ、再びブラックボックス化する
AIが生成したドキュメントも、システムが変更されるたびに更新しなければ、再び陳腐化します。「ドキュメントを作って終わり」ではなく、継続的に保守する仕組みを構築する必要があります。
4. 成功する導入の3つのポイント
ポイント① 段階的に導入する
いきなり全システムを解析するのではなく、まずは影響範囲が限定的な一部のプログラムから試してみましょう。効果を確認しながら、徐々に範囲を拡大することで、失敗のリスクを最小化できます。
ポイント② 人間のレビューを必須にする
AIの出力を鵜呑みにせず、必ず業務知識を持つエンジニアがレビューしましょう。AIはあくまで「下書き」を作る存在であり、最終的な判断は人間が行うべきです。
ポイント③ ドキュメント保守の仕組み化
システム変更時には、ドキュメントも更新するルールを明確にしましょう。変更管理プロセスの中に、ドキュメント更新を組み込むことが重要です。
5. まとめ: AIは「魔法の杖」ではなく、「強力な道具」
AI可視化は、レガシーシステムの課題を解決する強力な手段です。しかし、万能ではありません。AIに任せられることと、人間が判断すべきことを明確に区別し、適切に活用することが成功の鍵です。
「担当者の退職が迫っている」「ブラックボックス化したシステムに不安を感じている」そんな課題をお持ちの方は、まずは小さく試してみることをお勧めします。
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